シェードガーデン戦記

小さな北向き粘土質の庭で、ガーデニング素人が悪戦苦闘するブログ

庭映画レビュー 『マイビューティフルガーデン』

庭がテーマの映画は世の中にいくつあるのだろうか。庭が象徴的な場所として登場するものは多そうだが、庭づくりそのものを扱った作品はあまり多くない、ように思える。詳しく調べてはいないけれど。

最近iTunesで発見して、この映画が気になったのでレンタルしてみた。

植物が苦手な女性が庭付きアパートメントを借りて見事に庭を荒れさせてしまい、管理者から1ヶ月で庭を元に戻さなければ退去しろと迫られる。窮地に陥った彼女は、隣に住む偏屈なガーデニングの達人に渋々助けを求め、庭づくりに奮闘する、という話。

あらすじを読む限り、荒れた庭が美しく蘇っていく様が見られるのかと期待するじゃないですか!

SHERLOCK のモリアーティの人も出演しているし、面白そうだと思って。

 

結論から言うと、庭はさほど映らない。そもそも原題は「This Beautiful Fantastic=この美しき風変わり」で、主人公始めとしたクセのある登場人物たちがメインテーマ、庭はあくまでおまけなので、ガーデニング目当てで見た自分にはやや期待はずれだった。

面白いのか?という点は観る人によるけれど……予定調和で優しいおとぎ話を求めているなら、たぶん楽しめる。例えるならば、NHK朝の連続ドラマのスタッフがリメイクした「アメリ」。

整合性のとれた設定や緻密なストーリー設計が好きならばお勧めできない。良くあるエピソードの寄せ集めになっているし、不自然な展開や矛盾が多い。登場人物と設定はもう少し整理&深掘りできたと思う。

 

とは言え、隣人が丹念に手入れしてきた庭を案内してくれるシーンはとても綺麗だった。

この隣人が主人公にガーデニングの楽しみを教えようと、アンティークの本を渡す場面がある。緑色の装丁の美しい表紙が映り、Arthur Mildmay著、On Discovering a Gardenと書かれているのが見えた。ぜひ読んでみたくなったので検索したが、残念ながら実在しない本らしい。

……いや、無いんかい!ガーデニングの名著はいくらでもあるのだから、それを使えば良かったのでは。映画映えする装丁が必要なのは分かるが、本そのものも架空で済ませてしまうのは勿体ない。実在する本ならば、読んだ事のある観客は送り手の気持ちを思い、未読の観客は新しい本との出会いを得て映画の印象がより深まるシーンになり得る。

個人的にはここが一番がっかりした点だった。

 

庭映画、これから発掘していきたい。次に観たいのはこの3つ。